一瞬のトキメキ








好きなんじゃないだろうか。

…と思ったのはついさっき。
些細な事でそんな風に思ってしまうだなんて信じられないけど。




「止めなさいよ」

私の一言がきっかけだった。
その声にマルフォイが私を見てきた。
グリフィンドールの1年生も涙目で私を見てくる。

「あなた達、最高学年になってまでそんな事してるの?」
「ふん、穢れた血が……君にそんな事言う資格はあるのかい?」
「あるわよ」

腕組みをしてマルフォイの方に一歩近づき、彼を見上げた。
身長差が出来てしまうのは仕方ないけど悔しい。

その日の午後、人気のない廊下で声がしていた。
気になって行ってみると、この通り。
マルフォイ達がグリフィンドールの1年生をからかっていた。



「昔から懲りずによくやるわね。感心するわ!」

人差し指でマルフォイを指し、言う。
そして目で怯えている1年生に微笑むと、その子はお辞儀をして走って行った。
その子が居なくなったのを確認するとまたマルフォイを睨む。

「そんな君もいつもいつも口出しして、その態度は相変らずか?」

口喧嘩ではいい勝負だ。
引き下がる気なんてさらさらないわ。

マルフォイの子分(?)達もいつの間にか消えている。
きっと面倒な事を避けたかったんだろう。
人気がない廊下に私とマルフォイの2人。雰囲気はよくない。

「マルフォイ。こんな事、いつまで続くのかしらね」
「僕に聞くなよ。でも、卒業すればなくなるだろ?」
「そうね。あなたとはそれっきり」
「ああ、まったくせいせいするね」
「あら、珍しい。私もあなたと同じ意見よ」

あくまでも、マルフォイの前で私は弱気にはならない。
なってたまるもんですか。
こんな奴に引き下がるような真似はしない。

…だけど、今のマルフォイの言葉に少しだけ動揺した。

卒業すればなくなる。

確かにそう。
ホグワーツを出れば、マルフォイと顔を合わせる事もなくなる。
という事はこういう言い争いも、あと少しという事。
それはそれでいいと思う。
マルフォイと同じで、せいせいする。

…でも、何だか…ちょっとだけ悲しいような寂しいような気もした。


「……」
「…な、なんだよ。急に黙りこんで」


マルフォイの声ではっとした。
顔を上げてじっと彼を見つめてみる。
…せいせいする、か。
何だか、もどかしいわ。

「おい!な、なんか文句があれば言えばいいだろ?」

じっと顔を見つめていたら、不審がられた。当たり前だけど。

「…ねぇ」
「なんだよ…」
「本当に…」

そう思ってる?

「…なんでもない。もういいわ。あなたと話してる暇なんてないもの」
「は?………ぼ、僕だって君となんて話してる暇はない!」

マルフォイは大声で怒鳴るとマントを翻してスリザリン寮へと向かってしまった。

結局、私は言えなかった。
きっと返事を聞くのが怖かったんだと思う。
…なんだかこれって告白するみたい。

告白?
何よ、それ。
私がマルフォイの事好きだとでもいうつもり!?
まさか。そんな事ある訳ないじゃない!
馬鹿馬鹿しい…。



卒業まで、あと少し。












※題名、少女漫画みたいだ(笑)